「年収の壁」2026年版を図で整理:130万円・178万円と社会保険の加入
パートやアルバイトの方から「結局いくらまで働けばいいですか」と聞かれたときに、説明に使える線を、令和8年(2026年)の公的資料で整理しました。いわゆる「年収の壁」は、社会保険の加入、家族の健康保険の扶養、所得税という別々の制度の線です。混ぜずに分けて考えるのが出発点です。
2026年に押さえる3つの線
| 線 | 何が決まるか | 2026年の変わり目 |
|---|---|---|
| 週20時間以上(従業員51人以上の会社) | 本人が勤め先の健康保険・厚生年金に入るか | 10月1日に「月額8.8万円以上」(いわゆる106万円)の条件がなくなりました |
| 年収130万円 | 家族の健康保険の扶養(被扶養者)に入れるか | 4月1日から、労働条件通知書などに書かれた賃金で見込む年収で判定します |
| 年収178万円 | 本人に所得税がかかるか(収入が給与だけの場合) | 令和8年分から。12月の年末調整で反映されます |
このほか、配偶者の税金の控除(配偶者控除・配偶者特別控除)にも線があります(下の「3」で説明します)。
図:年収と手取りの目安
年収129万円で家族の扶養に入っている方の手取りは約128万円です。130万円を超えて勤め先の健康保険・厚生年金に入ると、保険料の分だけ手取りが減り、扶養に入っていたときの手取りに戻るのは年収約151万円です(図の条件の場合)。130万円を少し超える働き方が、本人にとって一番損になりやすい範囲です。
なお、勤め先の社会保険に入らない場合(ご自身で国民年金などに加入する場合)は、この図とは負担が異なります。
計算の条件
- 協会けんぽ広島支部の令和8年度の保険料率:健康保険料率9.78%(令和8年3月分から)、子ども・子育て支援金率0.23%(令和8年4月分から)。40歳未満で、介護保険料はかからない場合
- 厚生年金保険料率18.3%。標準報酬月額は保険料額表の区分で計算(年収を12で割った額を毎月の給与とし、賞与・通勤手当はなし)
- 雇用保険料:労働者の負担5/1,000(令和8年度・一般の事業)。扶養に入っている場合も、週20時間以上で雇用保険に入っている前提
- 所得税:令和8年分の基礎控除・給与所得控除で、年末調整後の1年分の税額(復興特別所得税を含む)。ほかの控除はなし
- 住民税は含めていません。社会保険料の会社負担分は手取りに関係しないため含めていません
1 社会保険の加入:週20時間以上なら年収に関係なく
令和7年の年金制度改正法にもとづき、短時間で働く方が健康保険・厚生年金に入る条件のうち、「所定内賃金が月額8.8万円以上」という条件が、2026年(令和8年)10月1日に撤廃されました。いまの条件は次の3つです。
- 週の所定労働時間が20時間以上
- 勤め先が従業員数51人以上の企業
- 学生ではない
つまり、従業員51人以上の会社で週20時間以上働く方は、年収が少なくても社会保険に入ります。最低賃金の減額特例の許可を受けている方で、所定内賃金が月額8.8万円未満の方は、原則として加入の対象外です(申し出れば加入できます)。
会社の規模の条件も、次のとおり段階的に下がり、最後はなくなる予定です(従業員数は厚生年金保険の被保険者数)。
| 時期 | 対象になる会社 |
|---|---|
| 現在 | 従業員51人以上 |
| 令和9(2027)年10月から | 36人以上 |
| 令和11(2029)年10月から | 21人以上 |
| 令和14(2032)年10月から | 11人以上 |
| 令和17(2035)年10月から | 10人以下も対象 |
加入の条件の詳しい説明は「パート・アルバイトの社会保険加入要件」をご覧ください。
2 扶養の130万円:4月から労働契約の内容で判定
家族の健康保険の扶養(被扶養者)に入れるかどうかの年収は、令和8年4月1日から、労働条件通知書など、労働契約の内容がわかる書類に書かれた賃金から見込まれる年間収入で判定されています。年間収入が130万円未満で、ほかの収入が見込まれず、次のどちらかに当たれば、原則として扶養に入れます。
- 同じ世帯で暮らしている場合:被保険者(扶養する人)の年間収入の2分の1未満
- 別の世帯の場合:被保険者からの仕送りなどの援助の額より少ない
130万円の基準は、扶養に入る方が60歳以上の場合や一定の障害のある場合は180万円未満、19歳以上23歳未満の場合(配偶者を除く)は150万円未満です。ここでいう賃金には、諸手当や賞与も含まれます。
次のように、書類から年収が判定できない場合は、この方法では認定されません。
- 扶養に入る日から数えて、契約期間が1年未満
- 「シフト制による」など、労働時間の書き方がはっきりしない
- 「通勤手当有」などで、手当の金額がわからない
会社として大切なのは、労働条件通知書に、時給・労働時間・日数・手当の金額を具体的に書くことです。届出には、労働条件通知書などの写しと、扶養に入る方本人の「給与収入のみである」旨の申立て(届書の申立欄への記入でも可)が必要です。
3 所得税の178万円と、配偶者の税金の線
令和8年度の税制改正で、令和8年分の所得税から、基礎控除が104万円(合計所得金額132万円以下の場合)、給与所得控除の最低額が74万円に引き上げられました。収入が給与だけでほかに控除がない場合、104万円+74万円=178万円までは所得税がかかりません。財務省も、所得税の課税最低限を178万円まで引き上げたと説明しています。
この改正は、12月の年末調整で反映されます。11月までの毎月の給与からの源泉徴収は変わりません。また、社会保険料を払っている方は、その分も所得から差し引かれるため、所得税がかかり始める年収は178万円より高くなります。
配偶者の税金の控除は、配偶者の給与収入で次のように決まります(令和8・9年分)。
| 配偶者の給与収入 | 控除 |
|---|---|
| 136万円以下 | 配偶者控除の対象 |
| 136万円超 207万円以下 | 配偶者特別控除の対象(収入が増えるにつれて控除額が段階的に減ります) |
控除の額は、控除を受ける方(配偶者を扶養する側)の所得によっても変わります。
会社として説明するときのポイント
- 「どの線の話か」を分けて説明する(社会保険の加入/健康保険の扶養/所得税・配偶者の控除)
- 従業員51人以上の会社で週20時間以上なら、年収に関係なく社会保険に入る
- 扶養の判定は労働条件通知書の書き方が基になる。時給・時間・日数・手当の額を具体的に書く
- 社会保険に入ってもらう際に労働時間を延ばす場合は、キャリアアップ助成金(短時間労働者労働時間延長支援コース)が使えることがある
- 令和8年10月以降に任意特定適用事業所等になった事業所では、会社が従業員の保険料の一部を一時的に負担して、通算3年間、本人の負担を軽くする「保険料調整制度」がある。会社が追加で負担した分は、3か月後の保険料から差し引かれて戻る
パートの方の労働時間の設計や、労働条件通知書の見直しのご相談は、お問い合わせからどうぞ。
令和8年11月時点の日本年金機構・全国健康保険協会(協会けんぽ)・厚生労働省・国税庁・財務省の資料に基づく。図の金額は、これらの資料の料率などを使った当事務所の試算です。
出典
- 労働契約内容による年間収入での被扶養者の認定の取り扱いについて|日本年金機構(2026年5月1日更新) https://www.nenkin.go.jp/oshirase/taisetu/jigyosho/2026/202605/0501.html(2026年11月2日閲覧)
- 2026(令和8)年10月に社会保険の短時間労働者に係る賃金要件が撤廃されました|日本年金機構(2026年10月1日更新) https://www.nenkin.go.jp/oshirase/taisetu/jigyosho/2026/202610/100104.html(2026年11月2日閲覧)
- 短時間労働者の社会保険(健康保険・厚生年金保険)の加入拡大のポイント|厚生労働省(令和8年1月作成) https://www.mhlw.go.jp/content/12500000/001633788.pdf(2026年11月2日閲覧)
- 令和8年3月分(4月納付分)からの健康保険・厚生年金保険の保険料額表(広島支部)|全国健康保険協会(協会けんぽ) https://www.kyoukaikenpo.or.jp/assets/R8_34hiroshima.pdf(2026年11月2日閲覧)
- 令和8年10月分(11月納付分)からの保険料額表【保険料調整制度適用】(広島支部)|全国健康保険協会(協会けんぽ) https://www.kyoukaikenpo.or.jp/assets/R8.10_34%E5%BA%83%E5%B3%B6.pdf(2026年11月2日閲覧)
- 令和8年度の雇用保険料率について|厚生労働省 山形労働局 https://jsite.mhlw.go.jp/yamagata-roudoukyoku/koyouhoken-20260316.html(2026年11月2日閲覧)
- 令和8年度税制改正による所得税の基礎控除の引上げ等について|国税庁 https://www.nta.go.jp/users/gensen/2026kiso/index.htm(2026年11月2日閲覧)
- 令和8年4月 源泉所得税の改正のあらまし|国税庁(令和8年4月1日現在の法令等に基づく) https://www.nta.go.jp/publication/pamph/gensen/2026kaisei.pdf(2026年11月2日閲覧)
- 令和8年度税制改正(国税)等について|財務省「ファイナンス」2026年4月号 https://www.mof.go.jp/public_relations/finance/202604/202604c.pdf(2026年11月2日閲覧)

